「大学4年間の○○が10時間でざっと学べる」シリーズの本書。
見開き1ページで説明と図解やイラストを交えた構成になっており
非常にサクサクと読み進める事が出来ます。
行動経済学のマーケティングへの応用が非常に興味深かった為、
マーケティングとの関連性を中心に本書をご紹介いたします。
良かった点・印象に残った点
マーケティングへの応用
本書は、行動経済学がどのようにマーケティングへ応用されているかの
記述が多い印象でした。
「マーケティングの神様」などと言われる、マーケティング学者のフィリップ・コトラーは
次のような言葉を言っております。
「行動経済学は、マーケティングの別称にすぎない。」
行動経済学とマーケティングがどれほど密接に関係しているか、学ぶ事が出来ました。
その中でも、印象に残っているマーケティングへの応用例を3つご紹介致します。
1.バーダー・マインホフ現象
バーダー・マインホフ現象とは、
「一度強く認識した事が、急に周りに増えたように感じる」現象の事です。
代表的な例として挙げられるのが「リターゲティング広告」です。
- 「あるサイトに訪問した事がある」
- 「ある商品をクリックした」
- 「ショッピングカートに入れた」
そのような見込み顧客に対して、何度も同じ広告を配信する手法です。
何度も同じ広告を目にする事で、その製品を意識させ、
「利用可能性ヒューリスティック」による過大評価と
「単純接触効果」によって購買意欲が自然に高まっていきます。
※利用可能性ヒューリスティック
→事象が頭に思い出しやすいかどうかで判断をする事。
(例)
飛行機事故が起こると、大々的に報道されるので、しばらくの間飛行機は安全性が低いと
評価をしてします。
※単純接触効果
→何度も見たり、聞いたり、同じ人に会ったりと繰り返すことで
そのものや人に好印象を持つようになる事。
自分も過去に、知らないうちに誘導されて、購入したものもあるのでは無いかと
怖くなりました。
2.ソーシャルゲームの罠
一度はソーシャルゲームをやった事がある方は多いのでは無いでしょうか。
ソーシャルゲームとは、SNS上で他のプレイヤーと協力したり、競ったりするゲームです。
そんな、ソーシャルゲームにハマる要因が解説されておりました。
サンコスト
サンコストとは、
今まで費やした、労力、時間、お金がもったいないという思いから、
後に引けず、間違った判断、行動をしてしまうことです。
ソーシャルゲームのガチャで手に入れた、レアなキャラクターやアイテム、
毎日費やした時間に、ゲームによっては身に付けたスキル
(格闘ゲームで練習したコンボ技やシューティングゲームのAIM力(敵に当てるスキル)など)
今止めると、せっかく手に入れたものを失ってしまうという思いから、
ますますゲームを止められなくなってしまうのです。
イケア効果
イケア効果とは、
家具のIKEAから来ており、人間は「自分で組み立てたり、作ったものに対して価格以上の価値を感じ
愛情を持つ。」ことです。
自分で苦労して集めたゲーム上のアイテムやカスタマイズしたキャラクターなど
「イケア効果」により愛着が沸き、ますますゲームから離れられなくなるのです。
同調効果
同調効果とは、
無意識に自分の意見や行動を周りに合わせてしまう事です。
ゲーム上で他のプレイヤーとコミュニケーションを取ったり、時には協力し、
時には競ったりとする事は、強い同調効果を生み出します。
- プレイヤー同士で競って上位何%のプレイヤーしか取れない称号を取り、
ゲーム内で自慢し、承認欲求を満たす。 - レアアイテムを使って、承認欲求を満たす。
- チームで戦うゲームでは、互いに協力しあい、目標を目指す。
実際に、ゲームの開発者側はあの手この手でユーザーが離れていかないように
手を凝らしていっております。
思い返せば私自身も数年前には、アプリゲームの「パズル&ドラゴンズ」
FPSの「APEX」(対人のシューティングゲーム)などにハマっている時期がありました。
今辞めたら、
- アイテム、ログインボーナスが勿体ない。
- ネット上で対戦して手に入れた称号を手放したくない。
- ゲームに費やした時間を無駄にしたくない。
など、このような理由で必要以上にゲームをしていた時間がありました。
ここで一つお伝えしたいのは、決してゲームが悪いと言いたい訳ではございません。
「ゲームをやり過ぎているな」と感じる方は、ゲームの時間を減らしたい場合に
その空いた時間で「何が出来たか?」を考えてみると良いと思います。
- 5分だけでも読書が出来た。
- 資格の勉強が出来た。
などです。
3.時間的圧力による意志決定
人は、意思決定の際に時間的圧力を感じると直感で素早い判断をしてしまいます。
これはファストフード店を事例に説明がされております。
レジカウンターの後ろにあるディスプレイに期間限定メニューやセットメニューなどの
写真が大きく映し出され、単品などの単価の安い製品は表示されません。
いざ自分の注文になった際に、ディスプレイに無い製品は
慌ててメニュー表から探さなければなりません。
しかしその際に、自分の後ろに並んでいる人がいたらどうでしょうか?
みなさんもその場面を想像してみてください。
「早く決めないと」とプレッシャーを感じ、すぐ目に入ったセットメニューを頼んだなんて
経験をされた方は多いのでは無いでしょうか。
このように、お店側は人の意思決定のメカニズムを活用し、
買ってもらいたい製品を選んでもらえるように誘導してきます。
行動経済学を学ぶ意味
行動経済学とマーケティングとの関係を見て頂いた通り
人間の意思決定のメカニズムに乗っ取り、企業は消費者を誘惑してきます。
行動経済学を学ぶ事で、企業の巧みな誘導を避け、不本意な買い物を避ける事が出来ます。
後知恵バイアスにより記憶の歪み
後知恵バイアスとは、
物事が起きた時に、その出来事が予測可能だったと考える事を呼びます。
例えば、サスペンス、ミステリードラマや映画で
- 犯人が分かると、その犯人が「怪しいと思ってた。」
などと考える事はあるのでは無いでしょうか。
(実際にドラマを見ている時には何も感じてはいなかったにも関わらず、、、。)
これは、ある出来事の結果を知ると、その出来事が起きる前に、
そうなったであろう記憶を思い起こす時に結果に引っ張られ、
記憶が歪められる事で起きると言います。
つまり、「脳が自分に都合良く記憶を変換する」という、何とも恐ろしい事です。
大学4年間の行動経済学が10時間でざっと学べる 概要
書名 | 大学4年間の行動経済学が10時間でざっと学べる |
著者 | 阿部 誠 |
発行者 | 山下 直久 |
発行 | 株式会社KADOKAWA |
印刷所 | 大日本印刷株式会社 |
製本所 | 大日本印刷株式会社 |
価格 | ¥1,650-(税込) |
こんな方におすすめ
- 学部レベルの行動経済学を網羅的に学びたい方。
- 他の「大学4年間の○○学が10時間でざっと学べるシリーズ」を読んだ事がある方。
まとめ
行動経済学がマーケティングでどのように活用されているか学ぶ事が出来ました。
一度でも行動経済学に触れた事がある方であれば、
サクサクと読み進める事ができる一冊です。
著者の阿部誠さんは他にも、
「サクッとわかるビジネス教養 行動経済学 オールカラー」を監修されております。
こちらは、イラストも多く行動経済学を初めて学ぶ方にもおすすめ出来る1冊です。
本書と合わせて読んで頂くとより行動経済学について学ぶ事が出来ると思います。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
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